症例 22 101歳 女性 乳がん 高齢者のオペ事情
先日101歳の乳がん患者が入院してきた。
翌日オペ予定である。
100歳越えでオペってどうなんだろう??なんて思っていたけれど、ご本人にお会いしたら、とてもしっかりされた方でとても101歳には見えない。小柄で丁寧な話し方をする方だった。
オペ前検査も問題なく、安心してオペ室に送り出せた。
そしてオペ翌朝お顔を見に行くと、「まだ力が入らなくて起きられないんです。」とおっしゃる。
「昨日手術したばかりで、これからリハビリするので大丈夫ですよ。」というと、「皆さんそうなの?私はいくじがなくて。」と。
「皆さんそうですよ。岡田さんはしっかりされてますよ」「そう?それなら良かった」と。優しく微笑んだ。
本当に稀に見る穏やかで上品な女性だった。
その後も順調に経過し、流石に抜糸は一日延ばしたが、予定通り退院された。
最近は90代でも結構オペをする。
特に大腿骨の骨折など整形外科のオペが多い。
90代でも入院前歩いていた方は家族がもう一度歩けるように、とオペを希望される。
逆に認知症があり、特に徘徊していた方は家族も希望されない事が多い。
高齢者の骨折の場合、急な入院であり、痛みもあり、せん妄を起こすリスクが格段に多い。
せん妄とは高齢者が環境の変化などで一時的に認知機能が低下して自分の状態を理解できずに不安からいつもとちがう精神状態、行動をしてしまうことを言う。
大声をだしたり、暴力的になったり、忘れっぽくなったり、会話が通じなくなる人もいる。
数日で以前の状態に戻る事が多い。
また元から認知症がある患者さんは骨折したことを認識できずに歩こうとして、痛みがあり、また混乱してせん妄になってしまう。
オペを待ってる間もせん妄、オペ後もせん妄とオペ前後の管理はとても気を使う。
ご家族はいつもと違う患者さんに驚き認知症になったと思われるが、せん妄状態という事を説明して気長に経過を見ていただく。
オペ後3日目あたりからだんだん通常に戻る事が多い。ある日突然別人のようになる方さえいる。
予測のつかない、人間の不思議な反応だ。
逆にこの前、大腿骨骨頭骨折の60代の方は絶対に手術は嫌だといって、手術せずにリハビリをして、骨がくっつくのを待ち、歩いて退院できた。
これもまた人間の体の神秘だと思う。
101歳のオペはどんなお気持ちだったのだろうか??
もっとお話を聞いてみたかったな、と今更ながら思った。