がん発見の現場
最近は国民全員健康志向が強く、ジム通いやジョギング・ヨガなどで健康を保とうと意識している方が多いと思う。
また人間ドックも勤務先や健康保険などから補助金もでて、ほとんどの人が受けていると思っていた。
最近我が病棟に入院して癌が発見され、初めて告知された方々がいるのでレポートする。
○まずは50代男性。
仕事が忙しく、健康で健康診断も受けたことがなく、病院にはほとんどかかったことがなかった。
今回胃の調子が悪く、ムカムカしたり、吐き気も続いていて、吐いてしまいついに外来にかかった。
胃カメラの結果噴門部狭窄(胃の出口がせまくなる)があり、多分腫瘍のためとの結果であった。
この若さで狭窄といえば多分胃癌。
しかし家族歴を聞いてみるとお父さんとお兄さんも胃癌で若いうちに亡くなっていて、お姉さんも乳がんだと言う。それなのに健康診断や人間ドックを受けていないなんて、医療者にはちょっと考えられない話だった。
余計に怖くて病院に来れなかったのだろうか。
主治医から結果を聞いた瞬間一瞬意識をなくしてしまった。
いわゆるショックを受けた状態でまさしく" 腰が抜けた" 状態だった。
実際こんな反応が出るなんてほんとにびっくりした。
その方は結局転移もなく急性期病棟に移り、手術を受け無事退院された。
○70代の男性は足の動きが悪く、整形外科の開業医に通院していた。症状が改善されず当院の整形外科を紹介され外来通院で治療を受けていた。
今回急に動けなくなり、外科で緊急入院したが、CTで明らかな胸水と右肺に白い陰影があちこち見られた。まさしく肺がんの所見である。
苦しくて動けなくなったのだろう。
その他もろもろ検査をし、肺がんが確定診断され、ご本人・ご家族に告知された。御高齢でもあり手術適応外で緩和ケアの方針となった。
この方は内科的なかかりつけ医はなく、整形外科に通っていただけだった。
流石に整形外科で全身をチェックする事はなく、全身を診てくれるかかりつけ医は必要だと思った。
○まためまいで入院を繰り返している患者さんがいたが、最近のMRIで小脳腫瘍が見つかった。
めまいの患者さん全員にMRIを撮ることもないが繰り返して同じ症状が出る場合は精密検査が必要なんだなと再認識した。
診療部門もそれぞれの専門分野が細分化してきていて、専門外の部分は見落としたり、適切な治療が受けられなかったりする。
逆に最近では総合診療科が増え、初診で体調が悪い人はまず総合診療科にかかり、疾患により各科に振り分けるという診察形式が増えてきている。女性ならではの疾患も診る女性外来があるところもある。
ほんとにどんな場面でも病名にとらわれず、異常をアセスメントできるよう全身を診ていくという姿勢が大切だと思った。