崖っぷち看護師長の孤独。。

もうすぐ還暦、看護師長のポロポロ雑記ブログです。

骨折の痛みもなんのその…認知症の彼女

昨日の日直にて、

1時間近くかかる山の施設より電話連絡あり。

「腰が腫れていて痛がってるんですが診てもらえますか?」と

 

今日はちょうど整形外科のドクターがいる。

「大丈夫ですよ。どうぞ来てください。」

と答え日直の先生に報告した。

 

なんだろね?

腰が曲がってきてそこが痛いのかねえー

それともなにか炎症性?

でも腰ってそんなことになる?

 

などと予想していると救急隊からのホットラインが入る。

 

「A施設で救急要請が来ていますが受け入れできますか?」との事。

 

救急隊であればもう少し病態がわかると思い、

「連絡は来ていますが、状態がよくわからないので、救急隊の判断で当院でよければ1番近いですし、受け入れできます。」と答えた。

 

それから40分後救急隊から連絡が入る。

 

「現場到着しました。

左踵部暗赤色で左膝下が黄色、大腿部は腫脹しています。

膝のところを押してもあまり痛がりません。」

 

「黄色?黄色って古い出血の後ですか?」

「いえ、黄疸みたいです」

「痛いのは左側だけなんですね?」

「右は痛くないようです。」

「じゃ整形外科で診ますので搬送どうぞ」と決着がついた。

 

まあ左側だけなら何か整形外科的な事、骨折とかまたは血栓での動脈閉塞・静脈血栓か?

とにかくなんとかなるでしょう。

 

そして50分後彼女は到着した。

 

小柄な彼女は到着した時からずっと悪態をついていた。

「馬鹿にして。この馬鹿は、ブスばっかりだね。ふん。こいつは全然役に立たない。ご飯は美味しい。」

などなど

端からこきおろし、「さわるな」など、拒否的発言も多い。

認知症丸出しなんだけどとにかくよく口が回る。

 

こういう会話ができる認知症の人を私は結構好きだ。頭の回転はとにかく速い。

話している中に人生を感じたり、いろいろと教えられたりする。

 

患部を見ると左下腿が内側に変形し、左上肢も拘縮が見られる。完全なる左半身麻痺だ。

左膝下は皮膚がはち切れんばかりに腫れて、確かにやや黄味がかっている。

左の爪はもう肥厚して剥げそうだ。

 

とにかくレントゲン撮影に向かった。

 

その間もずっと喋りっぱなし。

でもストレッチャーを押す私の歩き方を見て

「あんた足悪いの?」と的確な指摘もする。

 

出来上がった写真にはもうすでに左大腿頸部に人工骨頭が入っていた。大腿部にも骨を固定したプレートがはっきり写っている。

 

そして膝下は頸骨と腓骨が骨折していた。

 

普通なら痛くて大騒ぎするだろう。

 

でも彼女はそれ程痛がらずに他愛もない事をずっと喋っていた。

 

そしてドクターから施設長に説明が

 

「左は麻痺側であるしニーブレスで固定する以上の処置はできない。。

痛みや食欲不振などあれば入院しての全身管理も必要でしょう。」

 

その話を聞いて彼女ははっきりと

「病院はいやだ、入院は嫌だ」と繰り返し訴えたのだ。

 

今はリビングウイルなどと大袈裟に構えている部分を彼女は本能で察知し、自分の人生の1つの選択を普通にしたのだ。

 

実際

入院したら大声を出したり、病棟も大変だなぁ、と思ってしまったのだが、ホッとしたのと同時に" 良い選択をしてくれた!"

と彼女を尊敬した。

山の施設で彼女らしく悪態をつきながら過ごす姿が浮かんだ。