症例 19 がん告知は突然に
60代男性
ずっと腰が痛かったが、急に両下肢に痺れがでて、また力が入らず立てなくなってしまった。
救急搬送され、整形外科入院となった。
椎間板ヘルニア疑いで翌日CTを撮ってみると、腰椎に数カ所骨破壊を伴う、転移ガンの像が見つかった。
既往には大腸癌があった。
数年前、大学病院で手術を受けていた。
大学病院へ情報提供をお願いし、サマリーが送られてきた。
それによると、オペ後もケモを受けるように勧めたが、ご本人が拒否して通院しなくなった、となっていた。
ご本人にきいてみると、再発のリスクもケモの必要性もよくわかっていなかったようだ。
普通のおじさんなのでそれほど理解力に欠けるわけではない。
どうしてそうなってしまい、フォローもしなかったのだろうと疑問に思った。
そして数日後奥さんも交えて、検査結果・今後の見通し・治療の相談をした。
この奥さんが曲者だった。
年上女房で80代
認知症ではないが、とにかく話が横道にそれるそれる。
説明してもわかったようでいて、全く違う話を出してきて、またよく喋る、喋る。
そして止まらない。
建設的な話が全く出来ない。
なんの結論もでず、また同じ話を繰り返す。
患者は全く動けず、オムツなどケアも手がかかるが、「私がみるにきまってるでしょ」と言い張る。
そこから毎日のようにやってきて、看護師やMSWをつかまえ、延々といろんな話を繰り返す。
そしてわかった。
大学病院はこの奥さんに手こずり、大事なことを理解されないまま手放したのではなかろうか、という疑問。
本当のところはわからないが・・・
大学病院って最先端の治療をしてくれるが、治療が終わると特に退院支援が大変な患者を地方の病院へ振り分けてくる。
末期で余命数ヶ月だが、退院先がない、とか身寄りがいなくて、生活保護をこれからうける、とか、、
この奥さんは今まで遭遇したことがないほどの強烈キャラであった。
結局息子さんの勧めで出来ること=ケモをする事は決まった。
どれくらい余命が伸びるだろうか・・
なんかやるせない症例であった。
60代女性
ここのところ急に痩せてきて、お腹の重い感じがあり、検査入院となった。
血液検査・造影CTで膵臓癌が見つかった。
このご家族は早かった。
すぐに決断され、大学病院を希望し、転院していった。
がん告知は今はほとんどご本人にはっきり話す。そして、それを受け入れ、次の行動を起こすのが早ければ早いほどたぶん治療効果は大きいと思う。
癌とともに生きている人も多い。
わからないことはわかるまで説明して、後悔のない選択をして欲しいし、医療者は誰にでもその機会を与えるべきだと思う。