症例18 83歳 女性 進行の早い大腸癌の潔い最期の時
なみさんは40代の頃急激な症状があり、入院、点滴などして体調を取り戻した。その時、難病である病名を告知された。
それから病気とともに生きる、長い通院生活が始まった。
高原で温泉旅館を夫とともに切り盛りしていて、季節によってはとても忙しい時期もあった。
だんだん体調が良いと通院の期間が延びてくる。内服薬も最少になり、ときどき飲み忘れても、特に症状が悪化する事もなく、数年過ごした。
そしてだんだん病院が遠のいた。。
ときどき主治医の顔を思い出す事もあっただろう。
しかし病院側も医師が交替になったりして、フォローしきれなかった。
60代後半になり、また急激に症状が出た。
入院治療して、なんとか症状がおさまり、体調も復活した。
今度の主治医は患者への説明がとてもうまく、なみさんも通院をやめたことを一言も注意しない新しい主治医に信頼感を持った。
退院できるまでになり、通院予約に関しても、忙しい時期を考慮してくれる事に感謝して、なんとか通院を続けた。
今年も新型コロナウイルス感染の関係で日程は前後したが、薬が終わらないように通院できた。
しかし、今月の受診時の血液検査で異常値が数カ所でた。肝機能障害もある。
ご本人は
" 少しだるいなぁ🥱、
ここのところ食欲がないなぁ"
という程度。
緊急で造影CTを実施した。
結果は・・・
進行性の大腸癌疑い、肝臓転移も数カ所みられる。
緊急入院となり、翌日大腸カメラ、生検も実施した。
見るからに悪性だった。
大腸カメラは通過できたので、幸い、通過障害・イレウスにはなっていなかった。
それもあって強い症状が出ていなかったのだろう。
そして次の週。
ご本人を交えて、家族にも結果説明する事となった。
ご本人と信頼関係のある主治医はズバリ
「とても進行の早い悪性度の高い大腸癌です。」と言いきった。
外来通院時もいろいろ話してきたのだろう。
大腸カメラも2年に1度はやってチェックしてきて、先月の血液検査は全く異常なし。
とても早期発見がしづらい癌だった。
なみさんもなんとなく感じていたらしい。
動ずる事なく
「やっぱりそうかい。
一回はうちに帰りたい。来週また戻ってくるから。
いろいろと挨拶したり、息子にも渡すものがある。最後は痛くないようにして」とはっきりご自分の希望を話してくださった。
ご家族もショックを受けておられたが、異論はなかった。
そして往診・訪問看護の導入を決め、2日後に退院していかれた。
高原には今年の初雪が降った。
そして月曜日、息子、娘と一緒に山から降りてきた。症状が一段と進み、腹痛も出ていた。
緊急入院となり、痛み止めを持続で開始し、やっとウトウトできた。
そして、その日のうちに眠るようにお亡くなりになった。
定期通院に来て、癌が発見されてから2週間しかたっていなかった。。
あまりにも短期間だったが、潔い、なみさんらしい最期を看取らせてもらった。
合掌。