症例 3 89歳 女性 虐待による顔面打撲
Mさんは顔面打撲、右目周囲の主張と皮下血腫で入院してきた。
近くに住む娘さんがMさんに会いに行くと右目の周りが腫れ紫色になっており慌てて病院に連れてきたそうだ。
患者Mさんは長男夫婦と同居している。
会話は少しゆっくりだが理解でき、コミュニケーションもとれる。
すこーし認知症があるかなぁーという程度である。
娘さんの訴えでは、
「長男夫婦が虐待している」とのこと。
そういえばMさん結構痩せている。
最近はこういうケースも珍しくはない。
明らかな虐待は警察も介入したり、引き離すために相手に内緒で緊急入院させることもある。
Mさんが、入院してからは娘さんが毎日面会時間に来院し、色々と世話をやいていた。
だいぶ腫れもひき、ご飯もしっかり食べられるようになったので、そろそろ退院に向けて支援を始めた。
ご家族、ケアマネジャーや看護師が集まって退院先を決めていく。
Mさんは虐待を受けているという事もあり、退院後は、娘さんが引き取るとおっしゃっていた。
いよいよ退院日を決め、必要な介護サービスを整える退院前カンファレンスの日
長男も参加して結局今まで通り長男宅へ帰る事になった。
Mさんが希望したらしい。
長男夫婦も問題なく受け入れた。
私たちスタッフはなにか呆気にとられたままで退院日には何事もなかったかのように長男夫婦が迎えにきて退院された。
それから2ヶ月程して
またMさんが膝の打撲で入院してきた。
また娘さんが連れてきて入院中はかいがいしく世話をやいていた。
2週間程でまたまた長男宅へ退院していかれた。
後からわかった事だがどうも虐待というのは事実では無いようで娘さんだけが大袈裟に言っているらしいという事であった。
Mさんが一人でいる時に転んで受傷しているらしい。
このケースのように実際同居、介護している人より普段あまり見ていない親族の方がいろいろ口を出す事はとても多い。
そして医療現場も混乱する。
最近では治療方針の説明や決定時には一人の人をキーパーソンとして話をしたり意見をまとめてもらうようになっている。
でもMさんは息子さんからも娘さんからも心配され幸せものである。
せいぜい長生きしてください!