崖っぷち看護師長の孤独。。

もうすぐ還暦、看護師長のポロポロ雑記ブログです。

昔出会った田中さんの思い出・・甲状腺癌

もう15〜16年前になる。

 

私が個人医院でパートで働いていたときのこと。

開業医は内科なら1日3人患者が来れば成り立つなどと言われていた時代である。

 

そこは外科のドクターの医院であったが、外科は怪我や外傷の人はそれ程来ない。

高血圧や高脂血症など定期薬を飲んでる人が血液検査や薬を処方してもらうためにやってくる。

 

それ以外の収入源はいわゆる

 " 電気をかける"だ。

高齢者になるとあちこち痛いところが出てくる。

赤外線で温めたり、痛いところにピンポイントでマイクロ波を当てたり・・・

 

とにかく近くの年寄りの溜まり場、相談場所になっていた。

ほとんど毎日来院する患者さんも多く、朝から順番待ちが出る程だ。

 

たまにいない顔があると

「石井さん風邪ひいて来ないって」

などと言う、まるで笑い話のような楽しい職場であった。

 

その分ご近所との付き合いもまぁ大変だった。

 

また電気をかけてる間にいろんな話もするのでご近所の噂話などはとても詳しくなってしまう。

とにかくこちらは聞く専門に徹していた。

 

そんな顔見知りが増える中、田中さんは背も高く、すらっとしていて姿勢も良かった。人の噂はあまりせず、いつもちょっと洒落た話をするダンディな患者さんだった。

 

ごくたまーに「腰が痛くなった」と言って電気をかける日もあった。

 

そんな時間に聞いた事だが昔  医務兵  ?だったらしい。医者ではないが兵役の中で医者の手伝いのような事をやっていたらしい。

 

なので病気のことなども良く知っていた。

 

ある日田中さんに甲状腺癌が見つかった😱

 

田中さんは

「年取ればガンくらいできます。年寄りのガンは進行が遅いし手術などする気はありません。」

とはっきりおっしゃった。

 

そして

「長生きして一番良い事は、生と死が近くなって逝くときあっさり逝けること。

若い人が死ぬのは本当に苦しそうだ」

と話してくれたのだ。

 

90年近い人生の中でたどり着いた真実であるらしい。

その時は

「そんなこと言わないで、ご家族とも相談して、もう一度考えてみてください。」

などど答えた。

 

結局田中さんは手術や治療はしなかった。

 

私が転職するまで元気に通っておられた。

ご存命なら105歳くらいなので流石に今はもう亡くなられていると思う。

 

田中さんのあの言葉は今でも時々思い出す。

 

とくに高齢者の看取りの場面では・・・

 

田中さんの真実はかなり的を得ていると思うのだ。