崖っぷち看護師長の孤独。。

もうすぐ還暦、看護師長のポロポロ雑記ブログです。

地域包括ケア病棟の60日間制限の現実

地域包括ケア病棟は診療報酬の関係で入棟してから60日を過ぎると入院基本料がぐんと安くなり、1日500点になってしまう。急性期病棟に入院すると1日27000〜40000円ほどになるが、それが5000円になるという事だ。

長くいればいるほど病院の持ち出し=赤字になってしまうのだ!

 

 

だから60日以内で退院先

できれば在宅に返しなさいというのが国の方針だ。

 

今の時代ほとんどの家庭が共働きでやっと生活を成り立たせている。年寄りが1人で留守番できればよいが、介護が必要になった時、すんなりと家に帰れるのか??

 

またまた高齢者が多く老老介護や、一人暮らしをされてきた方達もバランスが崩れると、もう入院前の生活には戻れない。

一から退院先を探さなければならない。

 

特にこじれるのは、長年好き勝手に生き、家族もなく、ほとんど音信不通のちょっと遠い関係の身内がいる場合だ。

または嫁がみているのに嫁いだ娘が急に口を出してくる場合だ。

 

そんな時は病院所属のMSWが活躍する。

病状に合わせ、家族と連絡をとり、また必要なら行政とも連携をとりながら、患者さんの次の生活の場としての、最適な場所を提案してくれる。

 

またいろんな部門の人に声をかけて、カンファレンスをセッティングしたり、また情報を集め、ナース・主治医ともカンファレンスし、ゴールを決めていく。

 

病気の治療ができ、命の危険は去ってもそこから生き続ける事もまたたいへんだ。

 

よく年寄りは

「もう、さんざん生きたから、もういいわ。

はやくお迎えがこないかな」

などと言うがそういう人ほど元気に退院していく。

 

1番困るのはとても危ない状態で救急搬送され、一時は意識もない状態だったが、治療の結果危険を脱し、低めながら体調も安定した場合だ。

 

家族はもうお別れと思っていたのに、「退院できる」と言われ、寝たきりではうちで見れない、という場合。

 

「最後は病院で」

というのだが、最後にはまだ時間がある場合だ。

そんな時は他のいわゆる慢性期の病院へ紹介するのだが、どう説得すれば良いのか、本当に困る。

 

うちの病院にずっとかかっていて、

「最後までこの病院で」と言ってもらえるのだが、そういううまい制度がないのだ。

 

国の方針は往診、訪問看護を充実させて「家で看取れ」というのだから、現実と乖離している。

 

そんな患者家族に他の病院や施設を紹介しなければならないのだ。

 

なんか変だよね!

でもだからと言って亡くなるまでずっと入院継続というわけにもいかない。

 

そしてこの前のご家族は転院先が見つかったのに気に入らないのか「やっぱり他の病院にしたい」という。

もう今更60日以内の期間には間に合わない。

「よく見て欲しい」のだそうだ

でももうあまり食べられなくなって緩やかに老衰に向かっているお父さんを「よく見る」というのは何か違うんじゃないかなと思う。

病院なんてできることはそうたくさん無い。

あとは患者さんの生きる力・寿命である。

その残された時間家族が面会に行ったり、何か少しでも食べさせたり。

それがよく見るってことなんじゃないのかなぁ。病院に世話を任せて「よく見て欲しい」って

もう治療では無いよね…

 

そんな事を考えた一件でした。