崖っぷち看護師長の孤独。。

もうすぐ還暦、看護師長のポロポロ雑記ブログです。

症例 12 40代男性 精神科受診のすすめ

昨日意識消失発作で救急搬送された40代男性。

既往にアルコール依存症があり、昨年の暮れまで精神科に入院して治療をしていた。

2月始めからまたアルコールを飲むようになり、今回トイレ歩行後倒れていたそうだ。痙攣もしていたようだが、病院到着時は少し振戦が残る程度で呼びかけにも答えることができた。

外来で頭部CTを撮ったが明らかな脳出血脳梗塞はなく経過観察のため入院した。

たぶん嫌酒薬を飲みながらアルコールを飲んでしまいこのような症状が出たのだろう、と言うことだった。

 

夕方挨拶に行くとアルコール依存症とは思えないほどしっかり話され、大人しい感じの方だった。

 

そして今朝。

夜勤の看護師に声をかけると

「昨日のアルコールの人、禁断症状がでて大変でした。お母さんについてもらってます。」と報告を受けた。

夜からだんだん落ち着かなくなり、朝には徘徊と幻覚がでて、同室の患者さんの所に行ったり、床頭台の扉を開けたり、閉めたりウロウロ、ウロウロ。

 

顔を見に行くとまるで別人だった。

動きも速いし、力も強いので歩き出すと止められない。お母さんがいるが関係なくウロウロして、「潰れたサンドイッチが僕のです。」などと変なことを言っている。

夜勤もかかりきりにはなれないのでご自宅に連絡してお母さんにつきそってもらったのだろう。

 

朝からお父さんが「以前に入院していた病院に、そちらで診てもらえるか聞いてみる」と連絡をとってくれる事になった。

その病院はアルコール依存症の治療で有名な病院でここから車で2時間はかかる。

 

私も主治医に相談し、紹介状を作成して、地域連携室からその病院に連絡をとってもらった。

 

そして以前の担当の主治医はちょうど不在だったが午後外来受診ができると連絡が来た。

急いで退院の処理をして、データをコピーし、サマリーを書いて準備した。

 

その間もじっとしていられず、つんのめるように歩き回っている。

お母さんと先に車に行ってもらい、お父さんが残って書類が揃うのを待っていてくれた。

その時いろいろ話したのだが、ご両親はしっかりした普通の方々だった。

 

「前回も精神科病棟の隔離病棟に入って治療し、だんだん良くなって解放病棟に移った。

ここは普通の病院だから、夜は看護師さんの人数も少ないだろうし、うちのは力も強いから大変でしょう」とこちらの事情もよくわかってくれた。

 

そして午後の診察に間に合うように退院された。

 

救急搬送は基本一番近い病院に連絡が入る。

この方のように精神科での治療が必要だと思っても痙攣などしていると近くの病院が第一選択になる。かかりつけだと言っても2時間もかかる病院へはまず搬送してくれない。

まず近くの病院に搬送して、緊急の治療が必要となる疾病がなければ転院すれば良いのだ。

 

今回は精神科の入院歴があったから早めに受けてもらえたが、精神科へのハードルは高い。

そしていつも満床なのだ。

 

でもやっぱり専門医の治療は効果が違う。

餅は餅屋、早めに判断するのが肝心だと思う。

彼は精神科の外来受診後そのまま入院となったそうだ。

しっかり治療できますように!