崖っぷち看護師長の孤独。。

もうすぐ還暦、看護師長のポロポロ雑記ブログです。

日本酒が飲みたい患者さん

ワニさんは認知症のある男性患者さん。

1年ぶりに誤嚥性肺炎で入院してきた。

急性期病棟で抗生物質の点滴治療をして、退院調整のため地域包括ケア病棟に転棟してきた。

 

ベッドまで挨拶に行くと、1年前よりもだいぶ痩せて声をかけても反応せずウトウトしている。

 

前回は認知症見当識障害があるため、入院している事が理解できずによく

「馬券買ってきてくれや」

などと言っていた事を思い出した。

1年の間に意識レベルが落ちて寝たきり状態になってしまったのかと思い、そのままナースステーションに戻った。

 

翌日出勤すると夜勤からの申し送りで

「ワニさんが夜中に何回も大声を出して起きようとして大変でした。」

と言われた。

完全なる昼夜逆転

意識レベルもそれほど変わってないのかも…

 

昼間行くとやはりウトウトしている。

声をかけると目を開け反応はするようになった。

何かを訴えるのだが、声が出ず、発声も曖昧で何を言っているのかよくわからない。

 

「水?」「お茶?」「とろみ茶?」

どれも違うと首を振る。

そのうち指でテーブルに字を書き出した。

始めは字にならなかったがだんだん読めるようになって結局言いたかった事は

日本酒であった。

さすがワニさん!

でもそれは無理でしょう!

 

なんかちょっと嬉しかった。

 

それからは昼間はデイルームでなるべく起きているようにボール遊びなどで刺激をし、夜間は安定剤も飲みながら眠って生活リズムを整えるようにケアした。

 

いつも思う事だが、お酒が好きな人、日常晩酌をしてきた方も入院と同時に禁酒・禁煙を求められる。

 

流石に急性期病棟では体調が悪かったり、治療に影響がでたりで仕方ないが、ここ地域包括ケア病棟に転棟してくる患者さんはだいたいの方が治療を終わって退院許可がでているのだ。

元気になってきているかまたは、逆に寿命がそれほど長くないか…

好きなものを食べ、好きなことをし、生きていきたいだろうなぁと思ってしまう。

 

それこそクオリティ・オブ・ライフ

 

自宅にいられれば自由なのに、入院・施設への入所をすればそんな楽しみも出来なくなる。

実際看護師は酒飲みが多い印象だが、私も時々家で晩酌もするので禁酒は結構辛いと思うし、同僚ともそんな話をする。

なんか同情してしまう。

 

他人に迷惑をかけたり、度が過ぎなければ良いような気もする。

前はやはり男性の方が飲ん兵衛でそんな会話もしていたが最近は女性患者さんも多く「ビールちょうだい」という言葉を聞いて" わかる。わかる。" と思ってしまった。

 

看取りの場合も最後に好きなお酒を唇に…なんて事もできると良いなぁと思う。

なかなか高い壁である。